廣瀬編集長（以下、廣瀬）
新刊『10皿でわかるフランス料理』のご発売、おめでとうございます！
松嶋シェフにガイドしていただきながらフランス各地を旅しているような感覚で、地図を片手にしつつ、とても楽しく読ませていただきました。

松嶋さん
ありがとうございます。
フランスというかパリが好きですよね、多くの日本女性は（笑）。
パリは煌びやかな街だけれど、実は、フランスの地方で生まれた素朴だったブランドが、伝統と革新の影響なども受けながらラグジュアリー化して集まっているのです。
「フランス料理」も同じく地方料理の集合体。例えば、ロワール発祥のリエットやノルマンディー発祥の豚肉とりんごのソテー…どれも世界的によく知られているフランス料理でしょ？

廣瀬
確かに。
フランスというと、無意識に華やかなパリをイメージしてしまっているかもしれないですし、松嶋シェフが著書の中で紹介なさっていた10皿の地方料理は、私も知っているものばかりでした（笑）。

松嶋さん
フランスでは、「どこの地方出身でどんな環境や料理で育ってきたのか」が料理人にとってとても重要だとされています。
福岡で産まれた日本人の僕がフレンチの世界で生きていくためには、とにかく早く現地に行ってフランス人の感覚を身に付けなくては勝負できない！と専門学生の頃から思っていた僕は、料理の単語しかフランス語がわからず、肉と魚をおろすことしかできないまま、20歳で日本を飛び出しフランスへ渡りました。

廣瀬
素晴らしい行動力！ご家族が心配なさったのでは？

松嶋さん
快く送り出してくれた懐の大きな母には、行く先々で住所を調べて細目に手紙を書いていました。

廣瀬　
お母様との絆がしっかりとあるところが、とても素敵ですね！
料理の世界に興味をもたれたのは、やはりお母様が作られるお料理の影響が大きいのでしょうか。

松嶋さん
母の料理は美味しいです。
けれども、美味しいかどうかというより、昔からレトルトなどを使わずとにかく毎日きちんと料理を作ってくれることに、母の愛情を感じていました。
美味しいものを買って食べるのとは違う、人間味のある幸せや愛情を、料理を通して与えられていたなぁと今になって思いますよ。

廣瀬
おいしいといって食べてくれるご家族がいらして、お母様も幸せでいらっしゃいますね。
私も料理をしますが、思い通りの出来映えにならないことも多くて・・・そんな時もどこかしらちょっと褒めてもらえれば、嬉しくてまた頑張りたくなりますね（笑）。

松嶋
褒められて嬉しいのは男性も同じですよ。
僕は、同世代のキャリアを伸ばしたいという意識の高い女性とはぶつかってしまうことが多いのですが、気の遣い方が上手で褒め上手な人の前だと、素直に嬉しくなってもっと頑張れるんですよね。
能力のある人ほどさらに上をめざして頑張ってしまうとものだと思うのですが、そんな素直な女性こそ、正直で素直な面を持ち合わせるとさらに魅力がアップするのではないかと思いますよ。

廣瀬
なるほど。松嶋シェフの目から見た魅力的な女性像、とても参考になりました。
今日はありがとうございました！
普段女子力アップに頑張っている読者の皆様にひと言お願いします。

「10皿でわかるフランス料理」
松嶋啓介

日本経済新聞出版社
2014年3月21日発売
227ページ
定価：1500円＋税
 

撮影／田村浩章　取材・文／尾崎祐子