Vol.4 [大崎麻子さん] 自分で判断する力こそが今求められる“女子力”
post date:2013.04.23
ゲスト:
ジェンダー・開発政策専門家 大崎麻子さん
国連開発計画(UNDP)で途上国の女性支援やジェンダー平等の推進を担当。
現在はフリーでジェンダー専門家として活躍中の大崎麻子さん。
「ジェンダー」と聞くと難しい問題のように感じられますが、女性も男性も“自分らしく”生きていける社会をつくること。
人とくらべるのではなく自分基準で考える力、女性が幸せに生きていくための“女子力”についてうかがいました。
廣瀬編集長(以下、廣瀬)
3月に『女の子の幸福論』を出版した大崎さん。
国連では開発途上国の女性支援を担当されていましたが、いつごろから人権やジェンダー問題に興味を持ちはじめたのでしょうか。
大崎さん
新聞社に勤める父と、地域活動に積極的に参加していた母に育てられ、「社会で問題を抱えている人に何ができるのだろうか」ということを日常生活のなかで教わってきたように思います。
意識するようになったのは、アメリカの女子大に留学したときでしょうか。
やはり女子大ですから女性がリーダーシップをとることや女性の自立について教わりますし、学生もそういったことを強く意識しているんです。
ただ、その時点でも実はジェンダー問題に自分が関わるなんて思ってもいなかったんですよ。
意識的に目覚めたのは出産が大きいですね。
大学院で国際メディアを専攻するつもりが、予期せぬ妊娠で泣く泣く人権・人道問題に専攻を変更しました。
人権について学んではいましたが、実感としてあまりなくて。
それが、生まれたばかりの子どもが、少しずつ成長するのを目の当たりにし、人が持って生まれた尊厳や、伸びていく力をおさえつける権利は誰にもない、それが人権の根源だっていうことを実感したんです。
廣瀬
女性にとって出産は大きな転機になるといいますが、大崎さんにとってもそうだったんですね。
仕事と子育てをするなかで、悩んだりすることもあると思うのですが……。
大崎さん
実はあまり悩んだことがなくて(笑)。
昔から深刻に考えないというか……。
ただ、何か問題にぶつかったときはどんな選択肢があるのかはとことん調べるようにしています。
息子が小学生のときに足の骨に腫瘍ができたんです。
悪性だったら、すぐに治療が必要です。
ところが、日本には骨腫瘍の専門医や、検査から治療までを切れ目なくできる病院が少ないことがわかりました。
そのときは悩んでいる暇もなく、とことん調べて病院を探し当て、即出向いて必死でお願いし、入院させてもらいました。
幸い、良性で直ぐに治療もできました。
困った状況になったときにすぐに調べて行動を起こすことって大切なのかなと思いますね。
廣瀬
私だったら「どうしよう」とオロオロしてしまいそう。
母は強しというか、女性の持っているパワーなんでしょうか。
大崎さん
母親の持つパワーもそうですが、問題解決の仕方だと思うんです。
本にも書きましたが、自分ではわからない、解決の糸口がみつからない場合は専門家に頼ることが一番の解決策なんですね。
もちろん、その前段階として自分で調べるということ、誰にヘルプを要請すればいいのかを自分で判断することが必要。
生きていれば、必ず何がしかの問題に直面しますから、問題解決する能力は女性が生きていくなかで大切なことのひとつですね。
廣瀬
少し話が戻りますが、大崎さんが専門とされているジェンダーとはどういったことなのでしょうか。
イメージとしては男女平等、女性の権利を主張という感じなのですが。
大崎さん
生殖器官などの違いによる男、女という「生物学的な性別」に対し、男らしさとか女らしさといった、イメージに基づく性別をジェンダーと呼んでいます。
もっとわかりやすくいうと、日本では「男なら泣くな」とか、「女は家庭に入って当たり前」といったことでしょうか。
実は、日本の場合、男性に対するジェンダー差別が大きかったりするんです。
最近の男性が結婚できない理由として「年収が低いから」というのも、「男が家族を養わないといけない」というジェンダー規範からくるものですよね。
廣瀬
なるほど。最近は「イクメン」と呼ばれる人たちも出てきましたが、男性でも外で働くより、家事をするのが好きっていう人もいますしね。
大崎さん
そうなんですよ。つい、ジェンダーと聞くと女性問題ととらえがちですが、男だから、女だからという理由で選択肢が制限されてしまうことをやめましょう、ひとりひとりが持って生まれた可能性を開花させられるような社会をつくりましょうということなんです。
自分らしく生きていこうよって。
廣瀬
その“自分らしさ”って難しいですよね。
それを探している女性が多くいると思うんです。
だから、私もその手助けをしたいと思ってこのサイトを立ち上げたのですが。
大崎さん
まずは他人とくらべないことなのかな。
10代、20代の頃はとかくくらべがちだけど、自分にとってそれがプラスなのか、マイナスなのかを考えること。
自立するといってしまえば早いんだけど、難しいですね。
廣瀬
みんなと同じじゃないと不安になってしまいがちですが、自分にとっての幸せを見つけることもひとつですよね、きっと。
大崎さん
自分の人生ですからね。
イキイキと生きたいじゃないですか。
そのために選択肢を広げ、数ある選択肢から何を選ぶのかは自分。
その目を養うための第一歩は、自分を大切に思うこと、自分をよく知ることです。
そして、健康や女性の身を守る法律やメディアのつきあい方といった、現代社会を生きるためのリテラシーを身につけることが大切ですね。
自分らしく生きる力こそが“女子力”なのかもしれません。
廣瀬
今日は本当に勉強になりました。ありがとうございます。
最後に、Nstyle読者にひとことお願いします!
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(撮影:神ノ川智早 / 取材・文:岩淵美樹)
Nstyle主宰。航空会社の客室乗務員から、アルマーニ・ジャパンに入社、アパレルの世界へ。その後、タレントのスタイリストとして活動。現在は“女子力”を提案するスタイルプロデューサーとしてイベントや商品のプロデュース、ファッションブランドコンサルティングをはじめ、ファッション、ビューティー、ライフスタイル情報を雑誌・ラジオ等で発信している。
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