
【連載:THE DAY】vol.36-MOM
post date:2018.03.06
『お母さんね、癌の疑いがあって、昨日検査してきたの』
突然母親にそう告げられた。不安そうな顔をしているかと思いきや、
母はいつものように笑みを浮かべ、まっすぐ前を見ていた。
心配かけないように、何も言わずに検査をしてから言ったんだろう。
その日だっていつものようにみんなの夕食を作り、何かの話のついでかのように
あまりにも普通だった。
結果はね、先に言っておくと悪性ではなく良性だったの。
だから母にはまだ長生きしてもらうつもり。
ただ、そんな一言にね、今まで感じたことのない不安に襲われたのは娘の
私の方だった。当たり前のように愛情をかけて育ててくれて、最近は口喧嘩も
減ったけれど、そんなことにすら寂しさを感じていたの。
私と一緒になって最近太ったかなぁなんて体型を気にしていたのに今では
食べてもあんまり太らなくなって。そして我が家の名物だった夫婦喧嘩もめっきり
お目にかからなくなって。日々穏やかになることは素敵なことなのにね、
私には少し寂しく感じる。
そして、そんな穏やかで静かな時間に頭に浮かんでくるのは、母のしてくれた
私にとって『当たり前』だったこと。
当たり前のように出てきたご飯も、清潔でいるための清潔なお風呂も、
なくなったら補充される歯磨き粉もトイレットペーパーも。
体操着が乾いてなかったくらいで騒ぐんじゃなかった、、って母になって思うの。
当たり前の日々を作ることがこんなにも大変だったなんて。
毎日洗濯物を干しながらモォー!ってなりながら、
きっとお母さんもこんな気持ちだったのねって笑ってしまう。
そして、ありがとうって思う。
今、私たちが目を覚まして、また目を閉じて眠るまで、もしかしたら寝てる間もね。
きっときっと誰かの手を通して、当たり前のような日々を作ってもらっているんだなぁって。
目には見えないよきっと。でも、見ようとすれば見えてくるんだと思う。
私は、これからはちゃんと見逃すことのないように、感謝しながら生きていこうって
これをきっかけに思ったのでした。

AYAKA FUKANO(絵描き) 東京生まれ。思春期の多感な時期をドイツで過ごし、アートに初めて触れる。 幼い頃からの感受性の強さをアートにぶつけ、世の中に溢れても困らない愛を伝える。 instagram: HP:ayahundred |
Nstyle主宰。航空会社の客室乗務員から、アルマーニ・ジャパンに入社、アパレルの世界へ。その後、タレントのスタイリストとして活動。現在は“女子力”を提案するスタイルプロデューサーとしてイベントや商品のプロデュース、ファッションブランドコンサルティングをはじめ、ファッション、ビューティー、ライフスタイル情報を雑誌・ラジオ等で発信している。
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